みんなの憧れアルミ削りだしケースをつくる #2
前回はアルミ削りだしケースを作り始める準備までできました.
あとは設計して加工するだけです.
今回は機械加工を前提としたケースの設計についてです.
自分で加工できる人も,設計だけして加工を外注する人にも一読いただけたら嬉しいです.
※イラストとか少ないので適宜調べてください.下線部はキーワードです,検索すればある程度の情報が得られると思います.
前提として...
さて,機械加工(除去加工)を行う場合,加工できる形状とできない形状があります.
今回はエンドミルによる切削加工を前提として話を勧めます.これは,機械はエンドミルを高速で回転させ,金属を削る加工です.
ポケット加工を行う場合,四隅には工具半径(エンドミルの直径の半分)のアールがどうしても発生します.下記画像参照.
つまり,工具を決定してから形状を決める,もしくは形状を決めてから工具を決めることになります.よっぽど環境が整っていない限り,工具を先に選んでから,それに合わせた設計にするとよいと思います.
複数の工具(形状,直径の異なるエンドミル等)を用意するのは難しい場合,少ない工具で加工できる形状にします.私の使う機械はATCがついていないため,1本の工具で荒削りと仕上削りを行います.
また,工具で加工できない形状もあります.物理的に工具が届かない(中空など),または材料の固定ができないなどです.特に,材料の固定が甘いと工具の損傷や怪我につながるため,慎重に判断する必要があります.
材料の固定については,バイスなどを用いるのが一番簡単な方法ですが,難しいようであれば治具などを用意・製作するのも一つの手です.
重要なのは,①工具で削ることのできる形状にすること,②工具形状の転写を意識すること,でしょうか.
もちろん,複雑な形状なども手間をかければ加工可能なのは事実です.外注などを検討している場合には,こういった加工性によってコストが大きく変動するかと思います.
結局どうすればいいのか
今回は加工性を重視した設計にすることにしました.
ポケットの四隅のアールをできるだけ小さくしたいので,R3すなわち工具直径をΦ6とし,ポケット底面は直角にしたいため,スクエア形状を選択しました.
後はポケットの深さから刃長,首下長さを選びましょう.
で,この工具ですべての加工を行うことにして,形状を決めます.
ポケットの四隅は工具半径+0.2程度のアールにします.これは,コーナーの加工パスに円弧補間を入れ,切削体積が一時的に増加することでびびり振動が発生することを防ぐためです.すべてのポケットのコーナーに適応しましょう.
ポケットの底面はスクエアエンドミルのため,直角になるようにしておきましょう.
材料の固定方法については,外形が四角ければ比較的容易にできるかと思います.バイスで掴むのであれば,向かい合う二つの面が平行であると比較的楽に固定できます.これについては,工程設計次第となるため,一概に「こうすれば良い」とは言えません.
今回は8度の傾斜をつけるために,工程設計に時間がかかりました(経験が少ないからです).工程設計をミスすると加工できなくなる,またはとても大変になる可能性があります.
※工程設計とは,加工を行う順番,固定方法,加工条件などを決める作業です.例えば,ドリル→ポケット加工→面取りなのか,ポケット加工→ドリル→面取りのように順番を考えることです.
と,いうことでなんやかんやで設計を終えたケースがこれです.
二つの面からポケット加工を行い,底面を削ることて加工できるようにしています.
どうしても加工性を重視するとシンプルな形状になってしまうのは人によってはマイナスなのかもしれませんが,個人的にはすっきりしていて好みです.
削りだしケースを作るのはこれが初めてなので,今回はこの程度の難易度が妥当だと判断しました.失敗するとメンタル的にもしんどいので.
おわりに
なんだか小難しい話になってしまいましたが,私がケースを設計する上で意識したことはだいたいこんな感じでした.
私もただの大学生で,経験豊富なわけでもないですが,どこかのだれかの少しでも参考程度になればうれしいです.
せっかく自分で作ったPCB,自分で作ったケースに入れたいですよね.
と,いうことで次回はCAMのお話になると思います.
いよいよどこに需要があるのか分からなくなってきましたが,備忘録として書きます.
ではではー
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