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理想のアルミ削りだしケースを考える [構想編] #1

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はじめに ハードの開発が好きな人間にとっては,PCBよりもケースなどの開発のほうが楽しかったりします. 先日作ったPCBも,ケースを開発するために作ったといった方が適当です.で,肝心のケースをこれから設計したいわけなのですが,構想からまとめたと思って書いてます. 3月までには完成に持ち込みたいので,ぼちぼち構想を固めながら設計を進めていきます. 順次考えながら書いていくので長編になる可能性あります. コンセプトを考える ケースの設計を進めるうえで,コンセプトを固めておくことは重要だと思います. なにを目指して作るのか,どうしても取り入れたいものなどを明確にしておけば,妥協せず納得のいくものが作れるでしょう. 今回は ”アルミ削りだしケース” を前提として設計を進めていきます.そのうえで, 見た目の美しさ を何よりも重視することとします. 出典:KBDFANS 設計,製造までのすべての作業を一人でやるため,作業環境による制約が一部あります.以下列挙します. ① 加工機械は3軸 NCフライス盤 ② 材料は アルミニウム合金 (A5052など) ③ 材料の 歩留まり を考慮した設計にすること ④ 可能な限り既存の加工工具( エンドミル等 )で加工可能な設計にすること ざっとこんなところでしょうか.その上で,完成目標を以下のように設定します. (a)  金属特融の無機質さを基調とし,凛とした印象を持たせる (b) 十分な重量を確保し,快適な打鍵感と安定性を確保する (c) 見た目が美しく,オリジナリティを兼ね備えた形状とする 以上をまとめると,機能性よりも見た目重視で加工可能な形状を目指します.樹脂ケースでは表現できないアルミ特融の冷たい印象と無機質さが大好きなので,そうした見た目を重視して設計を進めていきます. ひとまず設計のコンセプトはこんなところでしょうか.せっかく自分で設計できるので凝ったことしてみたいですが,何かと制約もあるので自由度はそれほど高くないのが残念です. なにから始めるべきか コンセプトが固まったところで,具体的に作業に取り掛かりましょう.設計を行う上で,何から手を付けるか難しいですね. 設計を行う上での工程を列挙してみます.ただの学生が考えてるので,実際の機械部品設計とは異なります. (ア) 仕様の決定 何をするためのどんな部品なのか決定します.強度

60%のPCBをつくったよ! "DIMO66"

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新たしい60%キーボードのPCBをつくったのでログを残します. PCB自体にはそれほどこだわりがないので,あまり面白味はないと思います... メインの目的はケースを作りたいだけなので,基盤は結構普通です. 名前は DIMO66 としときます. コンセプト このPCBは日常的に使える60%キーボードを目指して設計しています. あとは,独立した矢印キーが欲しかったのと,スペースキーを分割できる仕様にしています. 作ったキーボードを人にあげたり貸したりできるように,それほど凝った配列にはしていないです.だれでも使いやすいのがいいです. 配列については,普通の四角くまとまった感じが好みだったりします. で, 完成したものがこちらです. ”すいっち” ここの配線めっちゃすき (実名隠してます) 黒のレジストは思っていたよりも微妙な仕上がりでした. 次はつや消しの黒+無電解金メッキのPCBにしてみたいですね.完全に見た目しか考えてないですが.でも,この組み合わせはお財布に優しくない... おまけ 設計の細かい話をすこしだけ. ProMicroを使わない回路については,マクロパッドを作った時に動作を確認していましたが,今回は保護回路を追加しています. これが一番大きなアップデートですね. ついでに電源のインジケーター用にLEDも追加しています. ICまわりもたいしたことはしていないです. こちらはキーマトリックス.I/Oポートがたくさん使えるので,マトリックスを分割する必要がありません. ファームウェアも書きやすいですし,回路図が分かりやすいのがいいですね. PCBの全体はこんな感じです.すべて手で配線しています.ベタGNDにはしてません. ケース固定用の穴はM2のバカ穴が中央付近に6か所あります.外周はケースに乗せる感じで,固定は真ん中って感じです. アクリル積層ケースなどは,少し難しいかもしれません. 配線のとりまわしにめっちゃ時間かけてたりします. 個人的お気に入りポイント. 回路を並行にするのって,あんまりよくないらしいんですけど,見た目重視なのでそんなことはきにしない! スイッチを付けると”すいっち”の文字が上からのぞけるようになってたりします.どうでもいいけど... おわりに 60%のPCBはこれが2回目なので,自分で納得のできるものができたようにも思います. 今後も

みんなの憧れアルミ削りだしケースをつくる #5(終)

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前回加工まで終えました. 今回はお披露目ですね. 最終回になります. さて, 唐突ですが,完成したものがこちらです. 総評としては,まぁ満足のいくものができたと思います.見た目重視の設計でしたが,期待通りの出来栄えです. 側面をサンドブラストした梨地の表面と,面取りの光沢感のコントラストがとってもいい感じになってくれました. 裏面とPCBで見えなくなってしまうポケット部分のギラギラ感も,思っていた以上の仕上がりでした. 残念ポイント 細かなところに目を向けると,2枚目,4枚目の写真で一部確認できますが,上部の面取り加工時に材料が びびり振動 してしまったため,面が荒れています. 先に背面のポケットを加工したので,細長く残った部分の固定ができなかったのが原因です.こういった振動などはシュミレーションでは発見できないので,気が付けなかったのは経験不足ということですね... 加えて,問題の背面のポケットですが,上部の細長い部分のせいで音叉みたいな効果を発揮しています(キーボードケースとしては致命傷).該当部を指で叩くと心地よい金属音を響かせてくれます.悲しい... びびってしまった加工面は仕方ないですが,音が響く問題は背面のプレートを 締りばめ で取り付けて事なきを得ました. よかったよかった... で, 組み立ててみました. キースイッチはGateronの赤軸で,キーキャップはシンプルな白色です.このキーキャップの無機的で冷たい印象がケースとよく合っていると思っています. 個人的にこだわった(実は必要に迫られただけ)背面は,透明なアクリル板からPCBとポケットのカッターマークが見えるというエモい仕様です. 普段は背面なので見えないのが重要です.見てはいけないものを見ているような感じで... あと,直交配列いいですね.この感じで60%とか作ってみたくなってしまいました. 肝心な打鍵感ですが,恐ろしい程よくなりました. 3Dプリンタ製のケースと打ち比べてみると,その差が顕著に表れています.スイッチを打ち込んだ底での重厚感や安定感が段違いですね. 作ってよかった!! まとめ これでアルミ削りだしケースを作るシリーズは終了です. 実を言うとこれを作ったのは2021年の10月ごろだったんですが,組立てたのが11月だったりして,ブログにまとめるのは2022年になってしまいました.

みんなの憧れアルミ削りだしケースをつくる #4

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前回はCAMでNCプログラムの生成までできました. 実際にCAMソフトを使うのは実はほんとに最後だったりします. それ以前に,どの順番でどこを固定してどういう条件で加工を行うのか考えている時間のほうが長いです. 工程設計 呼ばれているやつですね. なので, 設計 → 工程設計 → CAM → 加工 という工程において,工程設計が実は一番時間がかかります. 工程設計についてはあまり触れていませんが,あまり面白い話でもないので割愛しています. さあ,いよいよ実際に加工をしていきましょう.加工が終われば完成です.あと少し! これはキレイなきりこ ※加工中の写真がところどころ抜けているのはご勘弁ください. 段取り八分 さて,まずは準備です. 材料となるアルミニウム合金と,工具であるエンドミルを用意します.今回はA5052のブロックを用意しました.モノタロウのフリーカットで注文しています.材料費は2000円程度だったと思います.エンドミルも2000円程度で手に入ります. 材料は必要な大きさよりも3辺それぞれ2㎜程度大きく注文しましょう.そのままでは向かい合う面が平行でなかったり,直角に面が交わっていないので,初めに 面出し を行います. 正面フライス などを用いて寸法を調整し,直角,平行を出していきます.けっこう難しいです. ノギス や マイクロメータ で端と端を計測し,確認します. 3次元測定器 などがある場合はそれを使いましょう. 材料の準備はこれでOKです.最初の加工は背面のポケット加工ですね.機械にCAMで生成したプログラムを取り込み,動かします.動かし方については機械によって異なるので割愛します. そしたら待ってるだけで完成します.私が使った機械は標準的な3軸の NCフライス盤 です.主軸は BT50 で剛性もバッチリですね.ノギスで何か所か計測し,寸法に問題が無ければ次の工程に移ります. 次の工程はPCBが収まるメインのポケット加工ですね. いい感じにバイスで固定して削っていきます.こちらは加工中の写真がありました.ここが一番時間がかかりますが,気長に待ちましょう. 荒削りが終わったらノギスで寸法を確認し,問題が無ければ仕上削りを行います.送りの オーバーライド (プログラム上での送り速度に対する実際の送り速度の倍率)を調整し, 刃当たり送り を少し遅くしてもよい

みんなの憧れアルミ削りだしケースをつくる #3

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前回はケースの設計が終わりました. 正直なところ,金を積めば形状はどうにでもなると思います.自分で作るのであればそうもいきませんが. 今回は機械で加工を行うための準備をしまうす.前回よりも込み入った話になってしまうかと思います. 正直なところ,この情報を求めている人が居るとはあんまり思えないですが... 具体的には, CAM と呼ばれるソフトを使って,機械を動かすためのプログラムを作成します. ※イラストとか少ないので適宜調べてください.下線部はキーワードです,検索すればある程度の情報が得られると思います. CAMってな~に? さて, CAM についてですが,CAMとは 機械加工 を支援するためのコンピュータソフトを指します. 似たような言葉にCADがありますが,これは 設計 をコンピュータを用いて行うためのソフトになります.CAMは製造に特化したソフトという認識でいいと思います. 私が日常的に使っているCADソフトはAutodesk Fusion360 ですが,実はFusion360にはCAMも含まれています.ついでに言えば,強度解析などを行える CAE の機能も含まれています. 実はとってもすごいソフトウェアなんですね. 人間の手で動かす 汎用機械 とは異なり, マシニングセンタ などはプログラム( NCプログラム , Gコード などと呼ぶ)によるコンピュータ制御で加工を行います.そうしたプログラムを人間の手で書くのは大変なので,CAMを使うことによって簡単により複雑な加工を実現できます. 3軸の機械を使う場合,必ずしもCAMを使う必要はないと思います.ある程度の知識があれば,プログラムを直接書いてしまうほうが早い場合もあるでしょう.これについては,目的などに応じて使い分ければ良いと思います. 私の場合, カッターマーク を残したいので,今回はCAMを使うことにします. パスの生成 具体的な手順をすべて説明はしませんが,主要な手順と設定等を残しておきます. 初めに,使う工具を設定しておきましょう.工具ライブラリから,自分が使う工具のプロファイルを登録し,基準となる切削条件もここで設定しておくのがいいでしょう. 複数の工具を用意したのであれば,すべて登録します.二枚目の画像にある 切削条件 については後述します.ここで登録してるのはあくまでも基準となる値です. プ