みんなの憧れアルミ削りだしケースをつくる #4
前回はCAMでNCプログラムの生成までできました.
実際にCAMソフトを使うのは実はほんとに最後だったりします.
それ以前に,どの順番でどこを固定してどういう条件で加工を行うのか考えている時間のほうが長いです.工程設計呼ばれているやつですね.
なので,設計→工程設計→CAM→加工という工程において,工程設計が実は一番時間がかかります.
工程設計についてはあまり触れていませんが,あまり面白い話でもないので割愛しています.
さあ,いよいよ実際に加工をしていきましょう.加工が終われば完成です.あと少し!
これはキレイなきりこ |
※加工中の写真がところどころ抜けているのはご勘弁ください.
段取り八分
さて,まずは準備です.
材料となるアルミニウム合金と,工具であるエンドミルを用意します.今回はA5052のブロックを用意しました.モノタロウのフリーカットで注文しています.材料費は2000円程度だったと思います.エンドミルも2000円程度で手に入ります.
材料は必要な大きさよりも3辺それぞれ2㎜程度大きく注文しましょう.そのままでは向かい合う面が平行でなかったり,直角に面が交わっていないので,初めに面出しを行います.
正面フライスなどを用いて寸法を調整し,直角,平行を出していきます.けっこう難しいです.ノギスやマイクロメータで端と端を計測し,確認します.3次元測定器などがある場合はそれを使いましょう.
材料の準備はこれでOKです.最初の加工は背面のポケット加工ですね.機械にCAMで生成したプログラムを取り込み,動かします.動かし方については機械によって異なるので割愛します.
そしたら待ってるだけで完成します.私が使った機械は標準的な3軸のNCフライス盤です.主軸はBT50で剛性もバッチリですね.ノギスで何か所か計測し,寸法に問題が無ければ次の工程に移ります.
次の工程はPCBが収まるメインのポケット加工ですね.
いい感じにバイスで固定して削っていきます.こちらは加工中の写真がありました.ここが一番時間がかかりますが,気長に待ちましょう.
荒削りが終わったらノギスで寸法を確認し,問題が無ければ仕上削りを行います.送りのオーバーライド(プログラム上での送り速度に対する実際の送り速度の倍率)を調整し,刃当たり送りを少し遅くしてもよいと思います.
ここまでの加工でこんな感じになります.もう完成でもいいくらいですね.ポケット底面の模様がカッターマークです.凸凹しているわけではないのですが,工具のパスに沿って模様ができます.
美しいカッターマークになったので満足です.これがしたいがために自作しているまでありますからね.
このままではケースの底面が平行なままなので,8度の傾斜をつけます.サインバーとブロックゲージを使い,主軸に対して8度傾けて固定します.
この固定はつかみ代が少なく,保持力が比較的弱くなるため,切込量を小さくして加工を行います.
底面の加工は広い範囲を削る必要があるため,Φ12のエンドミルを使います.たまたま手元にあったエンドミルを使いましたが,ポケット加工と同じΦ6でも加工はできます.時間はかかりますが.
DLCコーティングが綺麗な色をしていますね.
今回はサンドブラストをかけて梨地の仕上にするため,ここでサンドブラストを行います.
せっかくのカッターマークは残したいので,ポケットをはすべてマスキングして側面にあたる4面だけサンドブラストしました.写真ががあいのはお許しください.
最後に面取り加工をします.
サンドブラストして梨地にしましたが,C面はどうしても金属光沢面が良かったのでこの順番での加工になっています.
手元にあった面取りカッターを使って,上面の4辺を面取りします.これも写真ないです...
これでひと通りの加工が終わりました.
文字に起こすとたいしたことしてないですね.実際に加工を行っているのは4時間程度ですが,準備や片づけに倍以上の時間がかかります.
おわりに
加工は準備をどれだけ念入りにするかが重要だと思います.”段取り八分”とよく言われますが,まったくその通りですね.
今回のキーボードケースは設計から加工まで一人で行っているため,できるだけ加工しやすいような形状にすることができます.設計者と加工者が異なる場合,設計者は加工を考慮して設計を行う必要があるのは言うまでもないことだと思います.
比較的小さいサイズだったので4時間程度で加工できていますが,60%サイズだと結構しんどいと思います.次は60%サイズに挑戦したいですが,材料費も高くなるし,材料の固定が悩ましいのでまだ先の話ですね.
次回ですが,完成したケースの確認と組み立てをしようと思います.最終回になりますね.
お楽しみに!
ではではー
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